今回は、令和2年に法律の改正により変更された年金制度の運用が、2022年4月から開始となることからその改正されたポイントについて解説していければと思います。皆さんの生活設計においてとても大切な内容であるため、ぜひ最後まで確認してもらえればと思います。
ちなみに年金制度の概要については前回の以下の記事で解説しているので、ぜひ活用してください。
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年金法改正の経緯
年金法が令和2年5月に改正されました。この法律により2022年4月から新たに改正された年金制度が運用開始となります。改正された趣旨は、少子高齢化社会の進行によるこれまでの年金制度の限界に対応するためです。
下の図は厚生労働省がまとまめた人口ピラミッドの推移ですが、これを見ると少子高齢化の加速は一目瞭然かと思います。
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平成16年度の年金法改正以前の年金制度の運用は、5年ごとに給付水準を固定した上で、保険料の段階的な引上げ計画を再計算する「財政再計算」が行われてきました。また、この財政再計算の実施に併せて、公的年金の財政バランスを取るために、負担水準と給付水準どちらも見直すような制度改正を実施してきました。
イメージは下図のとおりです。
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しかし、想定以上に少子高齢化が進行し、この制度では対応が困難となり、平成16年度に保険料の引上げスケジュールを固定した上で、自動的に財政のバランスを取る仕組みを導入しました。
イメージは下図のとおりです。
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これでも少子高齢化がさらに加速することが予想されていることから、受給できる年金額が無くなるのではないかという懸念があり、社会保険料を納める人を増やすことで、バランスを取るというのが今回2022年4月からスタートする制度となります。
制度改正のねらいは、①女性に働いてもらう。②高齢者に働き続けてもらう。③個人で財産を蓄えてもらうことにあります。
年金法の改正4つのポイント
上述した制度改正のねらいから、年金法改正のポイントは大きく4つあります。ここからは、それぞれの改正ポイントについて解説していきたいと思います。
4つのポイントは以下のとおりです。
- 厚生年金・健康保険の対象者拡大
- 在職中の年金受給の在り方の見直し
- 受給開始時期の選択肢の拡大
- 確定拠出年金の加入可能要件の見直し
①厚生年金・健康保険の対象者拡大
1つ目のポイントは、パートやアルバイトなどを含めた非正規雇用者も厚生年金や健康保険の対象とするものです。改正の新旧の対照は下表のとおりです。
加入者の条件が緩和されたという点が大きなポイントになります。なお、従業員規模は、段階的に緩和される見通しで、2022年から「100人超」の事業所が対象となり、2024年から「50人超」の事業所が対象となる計画です。
旧 | 新 | |
労働時間 | 週20時間以上 | 変化なし |
月額賃金 | 8.8万円以上 (年収で106万円以上) | 変化なし |
勤務期間 | 1年以上見込み | 2か月超え |
身分 | 学生は適用除外 | 変化なし |
企業規模 | 従業員500人超え | 従業員50人超え |
従業員100人規模の会社で、夫の扶養から外れないように年間106万円以内におさまるように働いているけど、今回の改正で106万円を超えて働くことにメリットはあるのかという疑問があると思います。
これに対しては、適用拡大の対象となれば、月収8.8万円以上(年収換算で106万円)、すなわち130万円よりは低い基準で扶養を外れることとなります。ただし、この場合、国民年金・国民健康保険ではなく、被用者保険(厚生年金・健康保険)に加入することになります。
- 障害年金が手厚くなる。
- 傷病手当金が受給できるようになる。
- 厚生年金は約18年、国民年金は約10年受給しなければ割に合わない。
- 健康保険料の金額を考慮すると約30年受給しないと割に合わない。
上記のメリット・デメリットから、将来の年金受給額を増やすために、わざわざ配偶者の扶養から外れる106万円を超えて働く効果は低いと考えます。
②在職中の年金受給の在り方見直し
年金を受給できるようになるのは通常65歳以上からですが、一部の条件を満たした人は60歳から65歳の間でも受給できる特別支給の老齢厚生年金があります。しかし、この特別支給の厚生年金は、働いていた場合、その収入額から減額されるケースがあります。
今回の改正は、その減額される金額の基準が上がったというのが見直された点がポイントです。つまり、年金を受給しながらでも働きやすくなったということです。
- 改正前:「年金 + 賃金」が月額28万円以上で減額
- 改正後:「年金 + 賃金」が月額47万円以上で減額
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加えて、現在65歳から70歳の会社員は、厚生年金保険料を納めながら厚生年金を受給している状態となっています。これまでは、退職等により厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは、老齢厚生年金の額は改定されませんでした。改正後は保険料を多く納めるほど、翌年からの年金が増えるのが改正のポイントになります。
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この2つの改正ポイントにより金額は微々たるものかもしれませんが、現役世代を退職後も働き続けようと考える人が増えるかもしれません。
③受給開始時期の選択肢拡大
今回の改正により、年金受給の開始年齢を75歳まで繰り下げられるようになります。
また、年金受給の開始年齢を繰り下げるほどに受給額が増える仕組みとなっています。
これまでは、5年受給開始年齢を繰り下げるのが上限でしたが、改正後は最大で受給開始年齢を10年繰り下げせることができます。
また、繰下げることによる受給金額の増額率は1月あたり、プラス0.7%(最大プラス84%)となります。
公的年金は終身年金なので、長生きすればするほど得だと言える制度です。
男性の平均寿命は約81歳、女性が約87歳である状況から、約10年で支払った金額と受給金額が同等となることから、老後資金が足りなくて不安な人も、65~75歳は働き続けることで補てんし、70~75歳からは増額された年金をベースに暮らしていくことも可能です。
自分のライフプランに応じて、繰り下げて受給するかどうかをよく検討する必要があると思います。
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④確定拠出年金の加入可能要件の見直し
これまでは、公的年金に関する改正のポイントでしたが、この確定拠出年金に関しては、私的年金の見直しとなります。
iDeCoに係る基本的な制度の内容については、以下の関連記事で解説していますので、活用してください。
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改正点は、①加入年齢の拡大、②加入要件の緩和の2点になります。
①加入年齢の拡大
iDeCoへの加入可能年齢は、これまで60歳までの加入から65歳までの加入へと拡大されました。
この制度は利点は、投資の長期的な運用により増すことから今改正は非常に有意義な改正だと思います。
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②加入条件の緩和
現在のiDeCoは原則60歳未満の国民年金被保険者が加入可能となっていますが、企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」という)に加入している人は、ほぼiDeCoに加入できませんでした。
今回の改正で、会社員も加入者の意思だけで加入することができるようになりました。
また、現在iDeCoの受け取り開始時期は、60歳以降70歳の間で選択することが可能ですが、60歳から75歳になるまでに拡大されます。公的年金の繰下げが75歳になるまで可能になることもあり、多様化する働き方・暮らし方に適合させる改正内容となっています。
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まとめ
今回は、年金法改正の背景、改正のポイント4つについて要点を解説しました。
自分の老後のための資産運用を図るうえで、今回の制度改正の背景を踏まえたうえで、如何に老後も自立した生活を送る必要があるかを痛感された方が多いのではないかと思います。
制度改正の内容をうまく活用しつつ、NISAやiDeCoという制度をうまく活用して非課税で資産形成を図ることも求められる時代です。
そもそも、少子化の進行を抑えていくことも重要ですが、これは政治や社会的な体制に働きかける必要があるため、選挙などで各政党の政策をよく判断して積極的に投票に参加することも重要だと思います。
自分の未来はいくつになっても自分で切りひらく、そんな姿勢を維持できるよう心身ともに健康な生活を送り、資産も無駄な浪費を抑えて健全な資産形成を図り、安心して老後を過ごせるように一緒に努めていきましょう。
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