2021年7月 日本では新型コロナウイルスの変異株による感染拡大により4度目の緊急事態宣言が発令されました。飲食店などの一部の業種に対しては休業要請が出されるなどして、個人の生活の悪化に加えて、社会的な景気悪化が進む中、雇用への不安も増大し「ベーシックインカム(basic income)」という言葉に注目が集まりました。
今回はこの「ベーシックインカム」について解説していきたいと思います。
ベーシックインカムとは何?
そもそも「ベーシックインカム」って何?
国民に対して政府が最低限の生活を送るために必要な額(例えば、月に10万円など)の現金を定期的に支給する政策です。
すでに一定の年収以下の世帯に対して生活保護という政策がありますが、生活保護とは違います。明確に区別するために「ユニバーサルベーシックインカム(Universal Basic Income)」と呼ばれることもあります。
これまでの生活保護などの政策との違いは、保証を一元化して国民の生活の最低限度の収入を世帯の年収などの個々の事情に関係なく、全国民を対象に定期的に一定額を支給しようという仕組みです。
ベーシックインカムのメリット・デメリット
ベーシックインカムという新たな政策案についてのメリット、デメリットを押さえておきましょう。
メリット
①貧困への対策
一定の所得を補償することで、最低限以上の生活を送れるようになります。働いても生活が苦しいワーキングプアの対策として期待されています。
②少子化対策
世帯に対しての支給ではなく個人に対しての支給であるため、子供が増えることで世帯所得が増加します。そのため、長期的に少子化対策になると期待されています。
③チャレンジャーが増える
生活の安定が確保されることにより、事業などに対してチャレンジャーが増えて、社会経済活動の活発化が期待されています。
④社会保障制度の簡略化
失業保険や生活保護のような国民として最低限度の生活が保障される仕組みがあります。これらの制度には各種申請手続きがあるほか、申請に対しての審査があり、認定まで長期間を要したり、審査に対して役人が行う業務などの行政面でのコストもかかっているのが実状です。国民全員に審査などの基準なく支給できることで社会保障制度の簡略化、簡素化が図れると期待されています。
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デメリット
①個人の責任の拡大
全員に何の審査もなく平等に一定の金額が定期的に入ってくる場合、その収入によって生じる事象はすべて個人の責任と捉えられます。貯蓄や投資に回して資産形成の補助としつつ、堅実に働いて生計を立てる人もいれば、都合よくとらえて働きもせず、パチンコなどのギャンブルに興じて散財し、結果、生活困窮者となる人もいて、受給に対して、どのような結果になろうとこれ以上の補償がない状態となることが予期されます。
②財源の不安
全国民に一定金額を給付するためには、国家としての財源が必要になります。現在、日本は不景気とはいえ、経済大国第3位の経済力があるものの、将来的にいまの経済状況が継続される保障はないため、不況に陥った場合の財源確保について課題があります。
ベーシックインカムの導入事例
導入にあたって、アメリカ、カナダ、イタリア、インドなどの各国での社会実験が行われています。
フィンランドにおける無作為に選ばれた2,000人の失業者に対する社会実験において、月約6万円を2年間支給しました。
結果、シングルマザーが所得増加により貧困的な生活から抜け出すことができたり、新たなチャレンジャーが増えて、ベンチャー企業の台頭による経済活動が活発化されたり、社会全体の生活の質が向上するなど様々な効果が得られたようです。
その他の国での社会実験の結果においては、犯罪率が低下したことや、子供の死亡率が低下したなどあらゆる問題に対する解決策としての効果を発揮している。
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まとめ
日本での導入も期待されるところですが、残念ながら一部のメディア上で議論されるなどの活動は見られるが、肝心な政治の世界では、まだ議論が足りていない状況です。そもそも与党である自民党が導入に対し積極的な立場をとっていないことがすべてに起因していると言えるかもしれません。
コロナの給付金支給などについて、国内では不正受給などの問題が顕在化してきています。人は悪い行動はとらないとの性善説に立つことで、支給の対象を緩くすると受給対象ではないのに受給したりするなどの不正受給の問題に役所が対処しなければならないなどのデメリットが内在していることも見えてきたのではないかと思います。
まずは日本国内における議論を活発化させて導入の是々非々を議論し、日本の少子化の進行などの対策として新たな施策として真に必要な施策なのか、そのほかにも実行力を伴う施策が取りえるのか、この案を安易につぶすのではなく、真に必要な施策かどうか見極めることが重要だと思います。
今回は以上です。
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