日本人の金融リテラシーの低さはアメリカや欧州と比較して圧倒的に低いと言われています。 ちなみに、「金融リテラシー」とは、「金融に関する知識や応用力」のことです。
しかし、 この数年、日本人の投資家人口が増加傾向にある傾向にあります。これは、2019年に金融庁が年金だけでは老後資金が不足するということをまとめた報告書(いわゆる老後資金2,000万円問題)にみんなが関心を集めたことが端を発しているとも言われています。
今回は、日本人金融リテラシーの現状について確認し、今後、資産形成を図るうえでどのようなことを押さえておくべきなのかを解説していきたいと思います。
日本人の金融リテラシーの現状
ここ数年の日本人の投資家人口が増えている要因として、国が、2016年から個人型確定拠出年金をより活用しやすいよう公務員なども加入できるよう制度改正し、名称も馴染みやすいように「IDECO」(イデコ)と呼称するなどの工夫や2018年には「つみたてNISA」といった少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度を開始するなどの取り組みも投資に対する関心を集めたきっかけになっていると考えられます。
2019年に金融広報中央委員会が「金融リテラシー調査」を行っています。この中では、アメリカや欧州諸国との調査結果との比較もなされており、先述のとおり日本の方が低い状況にあることが示されています。特に「インフレ」、「複利」、「分散投資」といった内容について日本人は知識が乏しい状況にあることが明確になっています。
①「インフレ」
設問は「高インフレのときには、生活に使うものやサービスの値段全般が急速に上昇する」という内容でした。答えは「正」です。調査参加国30か国の平均が79%なのに対して日本は62%で最下位という極めて正答率は低い状態です。
日本の正答率を年齢階層別にみると、年齢が上がるほど急速に上昇していました。これは、過去の石油ショック時等の高インフレの経験が記憶にあり、それが高い正答率の背景にあるものと推察されます。
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②複利
設問は「100万円を年率2%の利子がつく預金口座に預け入れ、税金を考慮せず、入出金がなかった場合、5 年後の残高はいくらになっているでしょうか」という内容でした。答えは「110万円より多い」です。日本の正答率は44%と半数以下の状況でしたが、調査参加国30か国の平均は42%と平均以上ではありましたが、「ベラルーシ」:7%や「タイ」:20%など極端に正答率が低い国があることから平均が低い状態であることから安心して良いわけではありません。ちなみに、金融リテラシー先進国の「アメリカ」は75%、「ノルウェー」は65%と高い正答率であります。
長期に投資を行えば複利の効果で収益を高めて老後資金を確保することもできるため、今後、ますます少子高齢化が進行する日本においては確実に押さえおかなければならない知識です。
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③分散投資
設問は「1 社の株を買うことは、通常、株式投資信託を買うよりも安全な投資である」という内容でした。答えは「間違っている」です。日本の正答率は47%と半数以下の低い状態でした。 調査参加国30か国の平均は 65%と平均正答率も高く、韓国は84%、ヨルダンは80%と高い理解を図れている国との差は著しい状態でした。
投資にはリスクを伴うということを理解したうえで、そのリスクを如何に分散し市場が暴落した時においても被害を局限し、いずれ回復する局面において収益を上げられるように長期の投資ができる体制を整える必要があります。
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日本人の金融リテラシーが低い理由
金融リテラシー調査の全般的な傾向として、いずれも年齢階層が上がるほど正答率が高くなる傾向があり、人生経験が金融リテラシー向上の重要な要素であるということに繋がると言えます。特に、日本では、デフレ、超低金利、預貯金中心の金融資産保有が長期にわたって続いてきました。このため、若年層を中心に、インフレや複利、あるいは分散投資に関して正答率が低いのも、当然の結果だと言えます。
では、これまでなぜ金融リテラシーが向上させられなかったのか、その原因について2点考察してみたいと思います。
学校でも家でもお金の教育が行われない
自分もそうでしたのでかなり実感がありますが、日本の学校においては金融教育が一切行われておりません。「投資とは何か?」や「税金」や「保険」などについても一切教育がなされていません。
また、学校だけではなく家庭においても金融教育が行われていないと言えます。とにかくサラリーマンとして働いて貯金して、マイホームをローンを組んで購入して退職金で返済するといったサイクルで生活してきた世代がお金の知識を教育するのは困難だったと言えるでしょう。
これらの状況を示すのが以下の図で金融リテラシー調査においても確認されています。
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日本人のお金に対するアレルギー反応が強い!!
日本人はお金に対して極めて強いアレルギー反応があると思われます。例えば、年収のことを他人に質問することはタブー視されている感があります。また、投資にいたってはギャンブルであるかのような印象を持っていて、投資を行っている人全員がたくさんのパソコンの画面で株価の日足チャートを眺めているかのような錯覚を持っているのが現状です。
おそらくこのアレルギー反応の根本には、お金儲けは汚いことであるというイメージを社会的に風潮から自然と持っていることにあると推察しています。例えば、時代劇の悪代官と商人が結託して汚職に手を染めるという大金を手にするとお金に目がくらんでしまうという印象を持っている人が多いのは事実かと思います。
まとめ
今後、日本の人口は2020年現在、約1.25億人ですが、2065年には0.88億人まで減ると言われています。少子高齢化の影響により、ますます老後の自立が求められる時代となることは間違いありません。また、新型コロナウイルスの影響もあり、自助公助共助という仕組みの限界によりベーシックインカムの導入も議論されています。
日本人が、これまで以上に金融リテラシーを高める必要性があることはこれまで解説してきた通りですが、日本人は大変勤勉で、国家全体で約2,000兆円という金融資産を貯蓄しています。金融リテラシーを高めて国民の一人一人が有効に資産を活用することで、日本の更なる発展のチャンスとなることは間違いないと信じています。
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