日本の年金積立金の運用は破綻しているとか、将来的に年金はもらえなくなるなどといった不安を煽るマスコミの報道が著しい状況です。ほんとに年金積立金の運用って破綻しているのでしょうか?今回は、年金運用の最新の実態について解説していきたいと思います。
ちなみに年金全体の仕組みについては、以下の記事で解説しているのでまだ確認されていない方は活用してください。
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年金積立金の運用の仕組み
年金の運用は誰が行っているかというと、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF:Gevernment Pension Investment Fund)という組織が行っています。
運用の仕組みは、厚生労働省が年金積立金をGPIFに直接預けて運用しています。国が直接行わないのは行政の肥大化を防止することに加えて、専門人材の確保が困難なことなどの理由があり、国とは別の組織が行う仕組みを取っています。
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GPIFの投資原則5点
GPIFは、年金積立金を運用するにあたって、以下の5つの原則をもって運用を行っています。
①安定的な運営のため、長期的な観点から年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする。
②資産などの分散投資を基本として、長期投資を行う。
③基本ポートフォリオを策定し、パッシブ運用とアクティブ運用を併用して、市場平均収益率を確保しつつ、収益を生み出す。
④ 投資にあたり、財務的な要素に加えて、非財務的な要素としてESG(環境や社会貢献、ガバナンス)を考慮する。
⑤長期投資の収益拡大を図るため、投資先及び市場全体の長期志向と持続的成長を促す、スチュワードシップ責任※を果たすような活動を進める。
※「スチュワードシップ責任」とは:機関投資家が、投資先企業等に関する企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「受益者」の長期的な投資リターンの拡大を図る責任
投資の基本ポートフォリオ
GPIFは上述した基本の5原則にしたがって、資産運用を行うにあたり、2021年現在、下表のポートフォリオを基本のポートフォリオとしています。
この基本ポートフォリオは、2006年から5年に一度見直されており、現在の基本ポートフォリオは2020年度に低水準で推移する金利の状況特に国内の経済状況を考慮しつつ、必要な利回りを確保しつつも、最もリスクの小さいポートフォリオを選定した結果が下表になります。
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GPIFの運用状況
平成13年からの運用状況として、単年度の短期間でみると市場の動向によって、プラスの時もあればマイナスの時もありますが、長期的な視点でみると、なんと令和2年度までの累積で約106兆円のプラスと安定的な資産運用がされています。
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2020年度の運用実績
2020年度、世界の経済状況はコロナショックにより年度当初から株価が暴落する状況でしたが、順調に回復傾向に転じて特に米国株などは株価の最高値を更新するなどの状況でした。リスク分散したポートフォリオであることから、年金積立金の運用収益としては約25%の高収益率を得ています。
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2021年度の運用実績
2021年度は、まだ運用途上にあるため、2四半期までの実績で下表のとおり単年度で0.98%の期間収益率で金額にすると約1兆9,000億円の収益額を得ています。2001年度の運用開始以降の収益率として3.7%と高収益率となっており順調な運用状況にあると言えます。
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年金資産の内訳
2021年度9月末現在の年金資産の内訳は以下の図のとおりの状況となっています。
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基本のポートフォリオのとおり概ね国内外株式、国内外債券でそれぞれ25%ずつの資産配分で運用がされています。
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2020年度国内債券の収益リターンはマイナスでありましたが、2021年度の2四半期までのトータルでマイナスの資産はありません。年金の運用に反対している人たちは株式なんかリスクが高いからポートフォリオに組み込むのはやめるように主張していますが、トータルの収益で一番の利益を上げているのが国内外の株式資産になっています。
まとめ
今回は、年金積立金運用の最新状況について解説してきました。年金積立金の運用実績としては、2001年からの累積収益として約+102兆2,000億円で収益率としては年率+3.7%で運用資産総額は約194兆1,200億円と十分な成果が出ていることが確認できました。
理由は分かりませんが、マスコミは決して、この事実を報道しません。自分でしっかり事実を確認する重要性が今回も実感することができました。
また、長期投資家として参考になる情報が基本のポートフォリオから以下の点にあると考えられます。
①株式一択ではなく、債券へ投資する以外に、国内外などの分散投資を図る重要性
②インカムゲインの重要性
③資産がマイナスに転じても長期保有することの重要性
④長期運用であっても、一定間隔でのポートフォリオの見直しによるメンテナンスの重要性
20年間の長期で見ると上手くいっている政府の資産運用の状況を参考にしつつ、個人投資家として損しないように勉強しながら資産形成を楽しみながらやっていきましょう。
今回は以上です。